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市長室からこんにちは(平成28年5月号)

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年4月21日更新

 益田の伝統芸能は何かと問われたら、ある人は石見神楽と答え、またある人は田植え囃子などを挙げるかもしれません。いずれもこの地に古来伝わるものですが、石見の他の地域にも流派や型を少しずつ異にしながらも分布しています。これに対し、益田糸操り人形は益田にしかなく、まさに益田特有の伝統芸能です。

 益田糸操り人形の操者は、約2メートルの高さにある歩み板の上から背丈70センチほどの人形を眼下に見て操ります。義太夫節と三味線の演奏に合わせながら、四つ目と呼ばれる手板を駆使し、人形につながった20本前後の糸を別々に上げ下げすることで、五体の動きだけでなく顔の表情も自在に変化させ、微妙な感情まで表現します。他の地域では人形の操り方が簡易なものに「進化」していますが、益田糸操り人形の保持する技法は昔ながらのもので、熟練を要します。オンリーワンたる所以はまさにここにあるのです。

 糸操り人形を益田に伝えたのは、元々東京浅草で人形芝居を業としていた山本三吉(本名は加藤元吉)です。いったん拠点を関西に移すも、その後さらに西へと流れ、明治20年頃に益田の地にたどり着いたとされています。当時流行していた浄瑠璃の愛好者たちに伝授し、益田糸操り人形の基礎を築きました。

 その後も益田糸操り人形は継承され、昭和38年に島根県無形民俗文化財に指定されました。また、昭和42年設立の益田糸操り人形保持者会は、長年の技術継承と地道な普及啓発により島根県から平成25年度地域伝統文化功労者として表彰されました。

 益田糸操り人形を鑑賞する機会としては、石見の芸術文化の発信拠点であるグラントワにおける年3回の定期公演がありますが、さらにこの5月、様々な関係者のご尽力により、ロンドン公演が実現することになりました。すでに海外公演の実績を積み重ねている石見神楽に続いて、いよいよ益田糸操り人形が異国の舞台に立つ日が来たのです。今回の公演が海外雄飛の契機となることを期待しています。