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市長室からこんにちは(平成29年11月号)

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年10月25日更新

  「文化の日」は、文化を重んじる日本国憲法が昭和21年11月3日に公布されたことに由来します。そして、この公布日の根拠として、明治天皇の誕生日という理由が大きいとされます。明治時代には「天長節」、昭和になって「明治節」とされた日が、戦後も国民の祝日の一つとして続いていることになります。


 「明治」には、多くの日本人に何かしら懐かしさを起こさせる語感があります。夏目漱石の『こころ』では「明治の精神」が重要なキーワードとなっています。「降る雪や明治は遠くなりにけり」という中村草田男の句も「大正」や「昭和」、まして「平成」ではなんとなく感覚が合いません。司馬遼太郎の『坂の上の雲』は、明治ならではの明るい上昇志向に満ちた大作です。


 とりたてた資源も産業もない極東の島国が開国から半世紀もしないうちに欧米列強と肩を並べる大国になった栄光の裏には、日清・日露の国運を賭けた戦争がありました。帝国主義の嵐が全世界に吹き荒れる中、天皇が軍の「大元帥」とされたことや、軍服姿の「ご真影」が馴染み深いことからも、明治天皇はどうしても雄々しい武人としてのイメージを持たれがちです。


 しかし、その実は、歴代天皇の例にもれず、文化的な素養と優しさを身に付けられた君主でした。それが色濃く現れたのが、生涯に10万首以上詠まれた短歌です。その多くは簡明で率直で、子どもから老人まで広く共感することができる作品です。


 良き友に交わりてこそ自ずから人の心も高くなりけれ

 晴れ間なき雨につけても思うかな今年の秋の実りいかにと

 四方(よも)の海皆同胞(はらから)と思う世になど波風の立ち騒ぐらん


 心の持ち方や交友関係の大切さを説き、また、事あるごとに国民の産業や生活を憂い、そして、世界平和を強く願う歌の一つひとつを読み返すと、近代最初の元号である「明治」があらためて新鮮に感じられます。おりしも「平成」も、残り年月がわずかとなり、新しい元号を迎える日も近づいています。