ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 市長の部屋 > 市長室からこんにちは(平成30年9月号)

市長室からこんにちは(平成30年9月号)

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年8月23日更新

 前回の東京五輪の遺産としては、ハード面の充実のほか、ソフト面での進化も見逃せません。

 抜本的な革新が求められたのは調理の分野でした。食文化の一様でない1万人以上の選手・関係者に対し日に3度食事を供給すること自体、これまで経験のない大プロジェクトだったのです。そこで、食品冷凍技術の研究・改良を重ねる一方、全国から選抜された一流の料理人によるチームを編成した上で調理工程を細かく分業することとし、さらに互いに秘伝としていたレシピと調理法を共有し徹底的にマニュアル化しました。こうして、高い品質を維持しながら大量かつ多品種の料理を短時間で仕上げる手法が確立されました。

 季節感や繊細美を重んじる和の伝統に最先端の国際性と機能性が加わることで、日本の食はめざましい飛躍を遂げました。事実、今や日本はミシュランガイドによる三ツ星レストランの数で他の追随を許さないグルメ大国なのです。

 また、単純明快な絵文字による施設の案内誘導や競技種目の表示を可能とする「ピクトグラム」の本格運用も東京五輪からでした。外国語に対応できる人材が不足していた日本で、国際大会を円滑に運営するために導入されたものですが、その簡便さから今では「世界共通言語」として定着しています。私が重ね重ね感嘆するのは、トイレの表示です。用途をあからさまに示すのではなく、青と赤のシルエットを並べて男女別々の空間と類推させる着想は実にエレガントです。

 1964年の東京五輪は、その19年前の敗戦からの完全復活を告げるものでした。次のTOKYO2020においては、もはや全面的な都市改造は望むべくもありませんが、自然との共生、多様性の尊重、AIやIoTの活用など、理想の未来を体現する大会運営は可能です。その意味で、発災から9年となる東日本大震災からの復興を象徴すると同時に、バブル崩壊後30年の閉塞感を払拭し、再び世界をリードする国として注目される機会となることを期待します。