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市長室からこんにちは(令和2年月12号)

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年11月24日更新

 音楽は、数ある芸術のなかでも純粋に世界共通という点では特別な位置づけにあるように思います。

 例えば文学などは言語なしには成立しない以上、おのずと言語を同じくする民族や国家のなかで生まれ、広まるものです。母語が異なる人が触れるためには、外国語を相当程度習得するか、さもなければ翻訳というプロセスを経る必要があります。

 絵画や彫刻などもやはりなんらかの歴史的、文化的背景を持つことが多く、時代や地域と無関係の作品は思うほど多くはありません。例えば、ルネサンス期の絵画の名作はギリシア神話や聖書の説話に関連するものが多く、基本的な知識を持たないまま作品の意味を十分に理解することは困難な場合があります。

 この点、音楽は、人によって好みや感覚の違いはあったり、または民族音楽などもあったりするにせよ、誰でもただ聴くだけでその美しさ、楽しさ、悲しさに魅了されてしまいます。歌詞を伴う楽曲もありますが、たとえその意味はわからなくとも感動を味わうことはできます。

 映画「地獄の黙示録」の爆撃シーンでも流れた「ワルキューレの騎行」は、運転中に大音量で聴くと気分が高揚しすぎて交通事故を招くとまで言われる曲で、音楽の威力を物語る実例の一つです。これを作曲したオペラ音楽の大家リヒャルト・ワーグナーは大変な自信家でもありましたが、そのワーグナーですら自分を凌駕する唯一の音楽家として崇拝したのが、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンでした。

 ベートーヴェンの生涯は、フランス革命によって旧体制が崩壊し、続いてヨーロッパ全土に戦争の嵐が吹き荒れた動乱の時期と重なります。個人としても聴覚を失っていくという絶望の中、かつての王侯貴族のサロンを和ませる典雅な趣向ではなく、大衆の心を揺さぶる革新的な芸術を追求し、音楽の領域と可能性を大胆に押し広げたのです。

 新種の病原体が世界を一変させた2020年は、音楽を通じて人類を鼓舞し続けた「楽聖」の生誕250周年でもありました。